死ねたらいいのに

夕食(私が寝込んでいたので、ピザを宅配してもらった)後、ソファに寝そべっていた。
皆、入浴を済ませたが、私は起き上がれない。
「そんなところで寝てないで、早くお風呂に入って、ベッドで寝ろよ」
何度も夫に声をかけられたが、うたた寝してしまった。
悪い夢を見た。睡眠薬なしで寝ていると、いつも悪夢を見る。
私が寝ているので、夫がお寿司を買ってきてくれる。私は起きられない。
「食べるしか能が無いんだから、食べることくらい、ちゃんとしろよ!いつまでも寝てないで、さっさと食えよ!起きて食うだけのことだろ!何でできないんだ」夫が怒鳴る。
昼まで寝ていたら、手伝いに来てくれた母が、ベッドの横に来て睨みつけている。
「少しは起きて、洗濯くらいしておいてよ!私が洗濯する回数を一回でも減らしてちょうだい!腰が痛いんだから!」なじられた。
「生き恥をさらしていないで、とっとと死ねばいいのに!」誰かが言う。
嫌な夢だ。冷や汗をびっしょりかいていた。夢だとわかっても、悲しい。
二人とも優しいので、そんなことは言わないだろう。でも、いつか、いまの状況にうんざりして、そう言い出すかもしれない。もしかしたら、心の中では、そう思っているのかもしれない。
もう、夜中の1時だ。
このまま、ベッドに入りたい。
でも、台所を見ると、炊飯器のお釜や、今日一日分の食器が山積みになっている。
夫は最近、手にアトピーが出て痛いらしい。
「悪いけど、できたら、洗い物は、みほがやってくれる?調子が悪い時は放っておいていいから」と言われていた。
こんな夢を見た後では、やらないと仕方ないだろう。
眠気を覚ます為に、大急ぎでお風呂に入って、洗い物をした。
一番苦手になってしまった、お米を研ぐこともしておいた。明日の、お弁当用のご飯だ。
明日は、何とかして早起きして、お弁当をつくれたらいいんだけど・・・。
最近は、ずっと夫が作ってくれている。私を少しでも朝ゆっくり寝かせる為に。
ついでに、洗濯もできたらいいんだけど・・・。
でも、これは無理かなぁ。
病気になって以来、洗濯物を干すことができなくなっている。
室内になら干せるのだ。庭に出て干すことができない。何故だろう?
包丁を洗っている時、お腹に突き立てたい衝動にかられた。
ほんとうに、そうできる勇気があればよかったのだが、出来なかった。情けなくて涙が出た。
今の私が死んでも、誰も悲しまないだろう。
チビちゃんは、しばらくは寂しがるだろうが、小さな子どもなので、すぐ慣れるだろう。
上の娘は、きっと私を恨んで憎むだけだ。実際にそう言っていた。
夫は、厄介者の私がいなくなって、ホッとするだろう。
母は、忙しい生活から解放されて、好きな事をして生きられる。
父は、母が楽になることを喜ぶだろう。
友達は、何年かは思い出してくれるだろうが、先輩が言っていたように、忘れてしまうだろう。
私自身も、これ以上、生きていくのは辛い。
そう考えると、私が死ぬことが皆のためになるような気がしてきた。
それなのに、今の私には勇気がない。
「死にたい」と思い立ったら、即、首を吊っていた私は、どこへいってしまったのか。今、そうできたら、今度こそは失敗しない。
神様に「今すぐ心臓を止めてください」とお願いしてみたところで、願いはかなわないままだ。
自分でやるしかないのだ。
そんなことを考えながらも、明日もまた生きて、皆に迷惑をかけるのだろう。
一体、いつまで、こんなことが続くのか。